秋の空。

18/19
113人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「――ん……」  次に錦が目を開けると、脱衣所であった。一刀が、安堵した表情で錦を見下ろしている。 「気が付いたか……」 「いっとぉ……?」  錦の額に冷たい感覚、手拭いが乗っている。己の体は拭いてくれたのだろうか、水滴は無く襦袢を掛けられ、一刀はおざなりに襦袢を身に纏っている姿。 「全く……のぼせる迄湯に浸かる事なかろうに……ほら、飲めるか」  一刀は呆れながら錦の体を起こしてやると、用意していた水筒を錦の口元へ。取り敢えず頂く錦。どうやら、一刀は倒れた己を介抱してくれた様子。錦は此の状況に己が酷くみっともなく思えてしまった。 「ご、御免なさい……其の、露天風呂って、初めてでつい……」  反省はしているが、一刀がいたから色々悩み恥ずかしかったとは、とても言えないので。俯く錦へ、一刀は笑って掌を頭へ乗せた。 「今日限りでは無い……又連れて来てやるから、風呂での戯れもほどほどにな」  優しく嗜められ、錦は又顔を赤らめ俯いてしまう。 「う、うん……約束します……」  素直に頷いた錦の頭を撫でてくれる一刀の暖かい掌。扱いは幼子の様だが、心地好くて、幸せで何も言えなくなってしまう。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!