秋の空。

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「体はどうだ」  優しく訊ねながら立ち上がる一刀が手を差し出した。其れを握り錦も続き立ち上がると、掛けられていた襦袢を丁寧に身に付けて。 「もう大丈夫だよ。有り難う、一刀」  錦の顔色を見て、一刀も安心し微笑む。 「しかし、てっきりもう寝たと思うておったが」  錦は、少し恥ずかしそうに頭を掻く。 「其れが……中々、一人じゃ眠れなくてさ……」  なもので、一刀を驚かせに向かおうと思い立ったが、此の様。驚かせる事は出来たのだろうが、間抜けな結果には違いない。 「一人では、眠れない……」  何故か神妙に呟いた一刀。錦は、最早笑うしかないと笑みを向けた。 「やっぱり、初めての処だと落ち着か――って、えっ?」  突然浮いた体に、目を丸くさせる錦は一刀に抱き上げられている。一刀が、そんな錦の額へ軽く口付けを落とした。 「済まぬ、俺が鈍かった様だ」  等と。錦は、眉間へ皺を寄せた。 「えっ?……な、何が……?」  一刀は、美しい笑みを浮かべ錦の耳元へ唇を寄せた。 「処変わるとお前も大胆だな……風呂で、待っていてくれたとは」  錦は、何の事だと暫く呆けていたが、直ぐに顔を真っ赤にさせた。 「えっ!?そ、そういう事じゃ……!」  なん足る事を、と。はしたない誤解を解こうとするも、一刀は。 「本日はよくやってくれたしな……此れよりお前へ、感謝を込め存分に奉仕せねばなるまい」 「ち、違うんだってば……!」  焦る錦へ、一刀は気に止める事無く足を進める。 「着替えてしもうたのでな、今回は部屋へ向かうぞ。楽しみは次に取っておこう……気に入ったのだろう?露天風呂」  何やら、火が着いた帝の御奉仕とな。そして、次とは。錦の顔は、赤くも青くもなる。眠れぬと悩んでいたが次に錦が思うたのは、何時眠れるのだろうと。其れは勿論、帝が后妃様への奉仕に納得為さる迄だ。 ――完。
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