3人が本棚に入れています
本棚に追加
夕陽が山の奥へと消え始めた橋の上。
「愛してる」
男は女を抱き寄せ、
「私も」
女もそれに応じた。
「ごめんよ、僕にはこうするしか愛情を渡す術を知らない」
そう耳元で囁いた後、唇を首へと移動させ口を大きく開く。
「わかってるわ」
女が受け入れると、鋭い牙は細い首に浮き出る血管へと突き刺さった。
恍惚とした表情で愛する女の血を吸い続ける男。
女は血の気が失せ脱力していく中最後の力を振り絞る。
「これで終わりにしましょ」
隠し持っていたナイフを男の腹部へと突き刺した。
「な、なんで……」
「このナイフには毒が塗ってあるの。
このまま二人で永遠に……」
女はさらに深く男の中へと入り、
「それも悪くないか……」
男もそれを受け入れて強く抱き締め、再び女の首元へと牙を突き刺した。
深く深く抱き合い続け、男も女も意識が遠くなり、ヨロヨロとよろけて欄干に体を預け、
「サヨナラだな」
「サヨナラだね」
体を密着させたまま谷底へと転落していき、
ポチャン
静かに流れる川の中へと消えていった。
最初のコメントを投稿しよう!