愛、深紅

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夕陽が山の奥へと消え始めた橋の上。 「愛してる」 男は女を抱き寄せ、 「私も」 女もそれに応じた。 「ごめんよ、僕にはこうするしか愛情を渡す術を知らない」 そう耳元で囁いた後、唇を首へと移動させ口を大きく開く。 「わかってるわ」 女が受け入れると、鋭い牙は細い首に浮き出る血管へと突き刺さった。 恍惚とした表情で愛する女の血を吸い続ける男。 女は血の気が失せ脱力していく中最後の力を振り絞る。 「これで終わりにしましょ」 隠し持っていたナイフを男の腹部へと突き刺した。 「な、なんで……」 「このナイフには毒が塗ってあるの。 このまま二人で永遠に……」 女はさらに深く男の中へと入り、 「それも悪くないか……」 男もそれを受け入れて強く抱き締め、再び女の首元へと牙を突き刺した。 深く深く抱き合い続け、男も女も意識が遠くなり、ヨロヨロとよろけて欄干に体を預け、 「サヨナラだな」 「サヨナラだね」 体を密着させたまま谷底へと転落していき、 ポチャン 静かに流れる川の中へと消えていった。
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