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さっきまでの自分は惰眠を貪り、玲に気を遣わせ肩まで借りた恩がある。
ここの入場料だって結局玲に出させてしまったし、と内心でぐるぐる考えていると、寄り添った玲の体が笑いで震え、その揺れに気がついた丈太郎はペンギンから目を離して玲を見た。
「もうちょっと雰囲気出してよ。 棒立ちじゃあ恋人感ゼロだ」
立ち止まっていたせいで後続が丈太郎たちに追いつき、人の話し声に気がついた玲の体が離れて行くと、丈太郎は肩に力が入っていたことに気がつき、鼻から息をはいて力を抜いた。
「ムリ。 今日はカンベンして」
「…オーケー」
『今日は』という前置きを忘れずにしてくれた丈太郎に玲が微笑み返すと、むっつりとした表情を隠すように背中を向け、一人勝手に歩き出してしまう。
「…」
急いでは事を仕損じる、慌てない慌てない、と胸の中で念じた玲は、離れてしまった距離に気がつき立ち止まって振り向いた丈太郎の傍へ、ゆっくりと歩み寄ったのだった。
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