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(だから)
心配になる、と思う気持ちを込めて、丈太郎は玲に話しかけ続けた。
「仕事のできる男ってのは格好良いし凄いと思うけど、頑張りすぎはソンケーできないな~」
「──…ちょっと、寄り道して帰ろうか」
「えっ? うん…」
何ともいえない間のあと、そう言ってバスの座席から立ち上がった玲と一緒に降車する。
バスから降りるまで言葉も交わさず運賃を払い、ほかの乗客を乗せて走り去るバスを見送ると、無言で暮れなずむ道を歩き出した。
「…?」
歩き出してからも、無言。
オレ、なにか玲の気に障ることでも言ったのかな、と疑心暗鬼になりかけたその時、通りかかった人気のない公園の中に玲の足が吸い込まれて行く。
突然どうしたの、幸子さん、待ってるんじゃ、という気持ちが先を行く玲の背中を見る丈太郎の胸を過るが、玲は構うことなく歩き続けると、街灯の明かりを淡く受けて光るブランコの前でその足を止めた。
「うっわ、ちっせぇー」
ブランコってそんなに小さかったっけ、と思いながら足をかけると、丈太郎は立ったままブランコを漕ぎ、体を揺らした。
「丈、自分の体重考えて乗れよ。 壊したら、弁償だからな」
「ご、ごめんなさい」
調子に乗ってギシギシ鳴るブランコを漕ごうとしていた足を止め、隣のブランコへ静かに腰かけた玲の方を見る。
「…レイ?」
「無理、してないか?」
俯いて指を組み、丈太郎の方を見ようとしない玲の様子を訝しみブランコから降りると、鎖を掴んだまま自分を見ない玲の方へ身を寄せた。
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