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「あぁ~、泣かないでよ、レイ」
「…かった」
泣きながら『よかった』と言葉を零す玲の姿に胸が詰まり、声が出せなくなる。
(そう、だよね)
過去の自分の行いを気にしていた自分より、きっとずっと玲の方がたくさん丈太郎に気を遣っていたのかもしれない。
ホモはダメ、ゲイなんて、と散々拒んできた自分に対し、無理な『お願い』をしているという自覚が玲の中に根強くあり、それでも何とかしなければならないという気持ちから抱え込んだ申し訳なさが溢れ出し、涙を流すことに繋がったようだ。
きっとそうなんだ、と思えば思うほど慰める言葉が思いつかず、
「ごめんね」
と、謝ることしかできなかった。
「謝らなくていい。 謝らなきゃならないのは、おれの方だって分かってるから」
「…」
謝らなくていい、と言われて、丈太郎はいよいよかける言葉を無くす。
どうしよう、どうしたらいい、と戸惑いばかりが胸を占め黙っていると、細い指先で涙を拭って笑みを零した玲は、沈黙を嫌って口を開いた。
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