恋したいから そばにいて

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  「ただ誰かを好きになりたいだけなのに、…好きに、なっただけで、き、気持ち悪いだとか、聞きたくもない言葉で詰られて…しかも、何にもしてない母さんまで責められて、っ、辛、かった」  泣くまいとしているのに涙が止まらず、細い肩を揺らしてしゃくり上げる。 (この世界が嫌だと思った。こんな自分なんか…死んでしまえって、思った)  誰も悪くない。 なら、誰が悪い?  それは、自分。 恋愛対象に同性しか選ぶことができない『変態』な自分が全部悪いのだ。 「ここに、来られて、なかったら…死んでたと、思う。おれも、っ、母さんも」 『人を好きになるって、とっても素敵なことよ』 『君が無理に人に合わせて変わる必要なんてない。 君は君で、変わらずにいることが何より大事なんだから』  衝撃の告白を聞いても動じず、朗らかに笑ってそう言った丈太郎の母親と父親。 『レイはレイだろっ、それでいーじゃん!』  ゲイの意味が分からないながらも、そう言って笑ってくれた丈太郎たちの存在が、傷ついた玲たち親子の心をどれだけ癒してくれたか分からない。  癒してくれたことに対する感謝の気持ちは言葉にし尽くしがたいほど玲の胸に溢れ、いつもいつでも、その思いを忘れたことはなかった。 '
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