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「…」
肩を震わせ、泣く姿を見せまいと顔を背ける玲の傍に、丈太郎はしゃがみ込む。
「オレより年上なんだから、そんなに泣かないでよ」
「…むり」
鼻声で、小さな子供のようにぐする玲の言い回しが可愛らしくて、思わず笑ってしまう。
「笑、うな」
「ムリー。だってレイ、可愛すぎるんだもん」
「! かわ」
年上を捕まえて可愛いとは何だ、と言い返そうと顔を向けると、丈太郎が更に近づき、体を抱いていた腕を取られ、驚く。
と同時に丈太郎の顔が間近に迫り…目蓋の上に何かを感じて、目を瞬かせた。
(…キスされた)
正確には『目蓋』に、だが。
「そんなこと、できるんだ」
「なぐさめんのなら、男も女もカンケーねぇし」
嘘だ、と瞬時に思うが、口にはしない。
照れ隠しで丈太郎が心にもないことを言っているのだと分かるからこそ、その気持ちを尊重した玲が何も言わず微笑んでいると、ぶすっとした顔つきをして照れ隠しをする丈太郎の影がゆっくりと離れて行く。
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