恋したいから そばにいて

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   全く器用とはいえない慰め方だったが、丈太郎の気持ちが嬉しくて笑みを深くした玲は、つい余計な一言を口にしてしまう。 「たった一日でこんなこともできるようになるなんて…凄いよ、丈太郎くん」 「レイにぃ~、オレのことバカにしてるでしょ、って…あ」  ついついいつものじゃれ合いだと思って言葉を返した丈太郎は、自分で墓穴を掘ってしまったことに気がつき、慌てて手で口を塞ぎ、無理矢理黙った。 「本当に…ツメが甘いよな、おれの、ニセモノの恋人は」 「悪かったな!」 「ッ!」  完全に涙が止まった玲の鼻をつまんで言い返すと、いつもとは逆の、玲を子供扱いするような丈太郎の態度に驚き、言葉を失う。 (…いつの間に)  五つも年下、子供子供していて可愛い、とばかり思っていたのに。  いつの間にか、自分と肩を並べても遜色ないほど大人になったのだと、丈太郎に対する認識があらたまった瞬間、玲の胸に甘い疼きが走る。 「帰って、幸子さんと飯食べないと。 だからもう、泣いちゃダメだからね」 「…うん」  いつもと逆の立場で子供扱いされたのに、腹が立たない。  そればかりか、キスじゃ終わらない丈太郎の優しい心遣いに触れた胸がほっこりとした暖かさに包まれ、自然と笑みが浮かぶ。  それが、どんなに嬉しくて、幸せなことか。  きっと丈太郎には分からないだろうな、と小さく呟きながら、隠し切れない笑みが浮かぶ口元を見られないよう顔を逸らした。 「泣き顔なんか見せたら、幸子さんびっくりするだろうし。…それに」  まだ慰めてくれるの、と思いながら顔を上げると、丈太郎は照れ隠しをするようにくせっ毛の後れ髪を撫でながら、 「キレーな顔が、台無しだぞ」  と早口でそう言って、星が輝き出した夜空を見上げた。 '
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