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何も起こらなかった。辺りは、しんと静まり返ったままだった。騎士の像は微動だにしない。
「どうした、何故動かなかい?」
ランドルフは苛立った。
「ねえ、水をさすようで悪いけど。」
セルマが言った。
「これって王の命で動く、不滅の騎士って書いてあったよね。」
「ああ」
「ランランって、まだ王子だって言ってたよね。」
少なくとも自称は。
「何ということだ。」
ランドルフは愕然として、がっくりと肩を落とした。
「……良い考えだと思ったのに。」
「ランラン、気を落とさないで。」
「ランドルフだ!」
セルマは落胆した少年を励ました。鐘の音が三度聞こえた。マデリンが鳴らしたこだろう。もうしばらくして、明るくなったら、ここを出ることにしよう。
(セルマさん。)
マデリンの声がした。
(扉の裏側を見て。)
そこには、マントをなびかせスコップを高々と掲げる騎士の絵が描かれていた。セルマのスコップと同じものだった。
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