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「昨夜のあれは何です?」
翌朝、朝食の席でセルマは聞いた。
「ああ、あれはああいうものです。」
中継ぎは答えた。
「だから、墓地から聞こえてきた声は何なの!?」
と、セルマは言葉を荒げた。
「何と言ったら良いのか、動く屍とか、歩く死体とかそういうものです。夜になると、起き上がって墓地の中をうろつき回るのです。まあ、柵には強力な結界が張ってあるので、通常は墓地から外に出ることはありませんが。」
「私の仕事って、墓地の美観保全と聞いてたんですけれど。」
「もちろん、そうですよ。ああ、そうだ。あなたが来たら、これを渡すように言われていました。」
それは、面接の時に貰ったぺらぺらの手引き書とは比べものにならない、皮表紙の分厚い指示書だった。
「何これ!!」
「夜になるまでに良く目を通しておいて下さい。」
セルマは呆然とした。
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