薔薇の王妃

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 彼女はいつものように一旋すると、鴉から魔女に戻ってセルマの前に舞い降りた。 「頼まれてたもの持ってきたよ。」  そう言うと、『蒼の系譜』の最新写本をセルマに渡した。 「ありがとう、レイ、わざわざ届けてくれるなんて、本当に感謝。」 「どうってことないよ。これくらいの物なら 運べるから。」 「ところで、レイ一つお願いがあるんだけど。あの子のことなんだけど……」  ちょうどランドルフが家から出てきたのを見て、セルマは切り出した。 「ねばもー!」 「きっと親子さん探してると思うから、戻ったら監察か管理局の誰かに伝えて欲しいのだけれど。」  レイは少し考え込むような顔をした。 「うーん、伝えてみるけど、どうかな?王都は今、大騒ぎだよ。王室付きの魔法使いや魔女たちが、待遇回復を訴えて、東の塔に籠もっちゃったんだ。監察も管理もその対応に追われてるよ。」 「何、それ?ひどい。私、何も聞いてない。」  寝耳に水だった。同じ王室付きだと言うのに、多分忘れ去られているのだろう。
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