22人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ
彼の示した方向には鐘撞き台があった。ジェイさんは、ズカズカと近づいていくと、力任せに支柱を引き抜いた。
(きゃあああ、やめてぇ)
マデリンが絶叫した。支柱に手を伸ばして必死で戻そうとしたが、いかんせん幽霊である。触れることもできず、すり抜けてしまった。
更に、フレッドが落ちてきた鐘を、拾うと器用に鐘撞き用のロープの先に結びつけた。彼はロープの端を持って、錘のついた武器のごとく、ぐるぐると振り回し始めた。
(鐘が、精霊様の鐘が……)
マデリンは、ふらふらとその場に倒れそうになった。もし幽霊でなければ、失神していただろう
「ごめんねマデリン、今は我慢して、後でちゃんと直すから。」
セルマは心の中でマデリンに謝った。
ジェイさんとフレッドには、もはや誰も近づけなかった。だが、人数は王妃側の方が圧倒的に多い。セルマの目には、二人の向こう側で、兵士たちが、横に広がっていくのが見えていた。周りを取り囲むつもりだ。
最初のコメントを投稿しよう!