薔薇の王妃

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 彼の示した方向には鐘撞き台があった。ジェイさんは、ズカズカと近づいていくと、力任せに支柱を引き抜いた。 (きゃあああ、やめてぇ)  マデリンが絶叫した。支柱に手を伸ばして必死で戻そうとしたが、いかんせん幽霊である。触れることもできず、すり抜けてしまった。  更に、フレッドが落ちてきた鐘を、拾うと器用に鐘撞き用のロープの先に結びつけた。彼はロープの端を持って、(おもり)のついた武器のごとく、ぐるぐると振り回し始めた。 (鐘が、精霊様の鐘が……)  マデリンは、ふらふらとその場に倒れそうになった。もし幽霊でなければ、失神していただろう 「ごめんねマデリン、今は我慢して、後でちゃんと直すから。」  セルマは心の中でマデリンに謝った。  ジェイさんとフレッドには、もはや誰も近づけなかった。だが、人数は王妃側の方が圧倒的に多い。セルマの目には、二人の向こう側で、兵士たちが、横に広がっていくのが見えていた。周りを取り囲むつもりだ。
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