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ランドルフは、長いこと、俯いていた。外が、がやがやと騒々しくなってきた。扉の周りに人が集まっている。これから破るつもりなのだろう。
はははは。ランドルフが不意に笑い出した。妙に乾いた声だった。
ランラン、とうとうおかしくなっちゃった、とセルマは焦った。
「父上はもう亡くなられたのだな。」
ランドルフは一息吸うと、力強く顔を上げて叫んだ。
Nemo me impune lacessit《ネモ メ インプーネ ラケシット》
礼拝堂地下にあった像の台座に刻まれていた言葉だった。「我に仇なす者に、必ず報いあれ。」確かそんな意味だ。
「ならば、私が次の王ということだ。」
どん、と音が響き、ガタガタガタと床が揺れた。敷石がガラガラと崩れ、大きな穴が空いた。そこから、セイウチと大工……ではない、海馬に乗ったネプチューンが、ひょっこり顔を出した。
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