それぞれの道

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 ネプチューンは穴から出て来て、セルマたちの方を見ると、重々しい表情で頷いた。海神は海馬にまたがったまま、扉に近づき、掛け声と共に手にしていた巨大な金槌……ではなく、(ほこ)を振り下ろした。扉は割れ、向こうから兵士たちの顔が覗いた。いきなり現れた海神の姿を見て、彼らは驚いて道を空けた。  ネプチューンと海馬は外に出ると、周囲をじろりと睨みつけた。王妃一味も王子も魔女も幽霊も屍も、動くのを止め、その一挙手一投足を注視した。  海馬はネプチューンを乗せ、一歩一歩、沈みこむような足取りで、ゆっくりと進んで行った。言うのも何だが、とても歩きにくそうだ。皆が固唾を飲んで見守る中、坂を下り、墓地の外へと向かって行った。  そして、静かに(おごそ)かに、門を通り抜けると、荒野の方へ遠ざかり、やがて姿を消した。 「あれは、何しに出て来たの?」 「いったい、何だったのだ?」  一同は敵味方も忘れて、思わず顔を見合わせた。
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