それぞれの道

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 一月後、セルマは王城の広間の露台(バルコニー)の上に立っていた。ランドルフの戴冠式に招待されたのだ。式も無事に終わり、広間では、宴会がひらかれていた。  鴉の魔女、レイも招かれており、さり気なくあちこちの人の輪に加わっては、ゴルゴン商会の名刺を配りまくっていた。さすがレイ、とぼけた態度にも関わらず、なかなかのしっかり者だ。 「墓守の魔女セルマよ」  外の景色を眺めていると、誰かが声をかけてきた。ランラン……いや、国王ランドルフだった。  久しぶりに会うランドルフは、元気そうだった。王冠をかぶり、ローブをまとったその姿は、威厳というより、お仕着せ感が半端ない。  もっともセルマも、金糸銀糸の刺繍入り黒のローブ姿で、着慣れない感においては、負けていなかった。このローブは、今回の戴冠式に出席するために特別に与えられたものだ。 「陛下。」  セルマは一礼した。 「そなたのおかげで王国の危機は救われた。深く感謝する。」  今思えば、危機と言うより盛大な茶番劇だった気がしたが、セルマは口にしないだけの分別はあった。その代わりにランドルフに向かって、にこりと笑った。 「勿体ないお言葉です。陛下。」  さすがにもう、ランランとは呼べない。
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