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「あれから、そなたのことばかり思い出して……これは、つまり恋ではないかと。」
「え?」
セルマは驚いた。何言ってるの、ランラン?違うよ、それは勘違いだ。ほら、よくある命の危険にさらされた時に出会った相手と恋だと錯覚するやつ、あれ何て言ったっけ。
「セルマよ、余の王妃となって、生涯余を支えてはくれまいか?」
どうしてそこまで話が飛躍するんだか。これだから王子病は……いや、ランドルフは本当に王子様で、今は王様だった。
「恐れながら、陛下。」
セルマは王の前に跪き、恭しく頭を垂れた。
「謹んで、お断り申し上げます。」
そう言うと、その場を辞して、さっさと墓地に帰って行った。終わりよければ、すべて良し。
とどのつまり、ランドルフは振られた訳だ。しかし、彼の体面を慮って、セルマが身分違いのため辞退したことになった。
後に、どこをどう間違ったのか、この話は大幅に脚色されて、王と魔女の壮大な悲恋物語として語り継がれていった。セルマにとっては大変不本意なことである。
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