薔薇の王妃

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薔薇の王妃

 その朝、ランドルフは、出されたネトルのスープを顔をしかめて飲み干すと、書状をしたためたいので、ペンと紙を所望する、と言った。  ペンと紙は机の引き出しに入っている、とセルマが伝えると、礼も言わずに、さっさと部屋に戻ってしまった。  ランドルフが来てから、三日になろうとしていた。  あの晩以来、彼は夜の見回りについて来ることはなかった。むしろ、夜になると、早々に部屋の中に閉じこもって鍵をかけ朝まで出て来ない始末だ。おかげで、セルマの方が居間の長椅子で休まなければならなくなった。  ランドルフの(もと)に迎えが来る気配は、いっこうになかった。死んだと思われて、棺に入れられたのか、はたまた、ふざけて入り込んでしまって、手違いで埋葬されそうになったものかはわからない。セルマは後者の方だと思っていた。  身なりがいいから、それなりに裕福な家の子なのだろう。今頃、家の者たちは必死で探しているはずだ。このまま長逗留(ながとうりゅう)させる訳にもいかないし、今度、定期巡回か誰か来た時に、一緒に連れて行って貰うのも良いかも知れない。  そう考えていた矢先、折りよくレイが訪ねてきた。 「ねばもー、セルマ。」
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