ホットココアの香りがする

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      「大学生いいなぁ。」 今年の春に専門学校をめでたく卒業し、 美容師として働き始めた彼女、亜希がぽつりと呟いた。 「そうねぇ…つーか、なんだその格好は」 二人分のマグカップを持った智也が目にしたのは、亜希の最大級にだらけた姿。 仮にも彼氏の家に来ているというのに 床に寝転ぶ…まではいいものの、脚だけソファーに乗せ、その両脚で数字の4を描いている。 おまけに両手はバンザイの状態だ。 「いーじゃん〜、久々の休みで久々のお家デートだし」 「まぁそりゃそうなんだけど…」 先ほどまですっぽりと収まっていたソファーから ずるずると落ちたらしく、 前髪はなくなり、綺麗に整えられたショートカットの髪が盛大に爆発している。 その様はもはや… 「殺人現場みたいだからやめてくれる」 「お、分かった?殺人現場みたく落ちてみたの」 亜希がケタケタと笑う。 「ふざけるのもそろそろにして  ほら、起きて。ココア冷めるよ」 「ちぇ、ノリ悪い」 のそのそと体勢を整えた亜希の隣に智也が座り、 二人で智也が入れたホットココアを飲み始めた。
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