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再会
翌朝、村の荷馬車でカナデの母親が暮らす村へ案内してもらうこととなった。カナデの家族は隣国スペンツ国との国境に面している村で暮らしているそうだ。
広大なフランシア共和国の大地を西へ丸2日荷馬車に揺られて旅をした。そして
「イブキ少佐! あそこが目的の村です」
そこは雄大なピオーレ山脈の山間にある小さな農村だった。ドルイ帝国の危険にさらされることもなくまさに隠された楽園の様にのどかで平和な時が流れていた。
そして綺麗な空気に川のせせらぎ音が聞こえ、村の人たちは平和な日々を過ごしていた。
小さな湖の畔にある赤レンガの家の前で荷馬車は停車した。
「この家です」
イブキは荷馬車を降りて家へ続く道をそよ風に吹かれながらゆっくりと歩いた。家に近づくにつれ心臓が激しく脈を打ちまるで再会を待ちわびている様だった。
ジリリリリリ
家の呼び鈴を鳴らすと中からカナデと同じ赤髪の女性がドアを開けた。
「どなたですか? 」
「私は元イングラム陸軍第117部隊隊長のイブキと言います」
イブキは、カナデから心臓を移植してもらったことなど今までの経緯を詳しく説明をした。
「そうでしたか。ドルイ帝国に街を襲われたときに娘とはぐれてしまったので、毎日神様にお祈りをしてあの子の無事を祈っていたのですが…… 」
母親は言葉に詰まりその場で泣き崩れてしまった。イブキが母親の肩にそっと手を添えて
「いいえ、カナデちゃんは死んではいません」
イブキがカナデからもらったフルートを母親に見せると
「それはあの子が大切にしていた夫の形見のフルート」
イブキは、庭の真ん中に立ちフルートに唇をそっと乗せて演奏をした。
「この曲はいつも夫がカナデに聴かせてあげていた天使のレクイエムと言う曲であの子がよく演奏していました」
イブキの演奏に反応して甘い草花の香りを含んだ柔らかい風が辺りを包み込んだ。母親の目には大粒の涙を流しながらイブキの演奏姿をカナデの姿と重ねるようにして眺めていた。
「カナデ! 」
母親がイブキに抱きつき号泣した。イブキは母親をそっと優しく抱きしめてあげると心臓の鼓動が優しくこだまするのが伝わった。
「カナデちゃんはここにいます。私の胸の中で生きているんです」
母親がイブキの胸にそっと手を当て鼓動を確認した。
「カナデ、会いたかったわ」
イブキが母親の手の上にそっと自分の手を添えた
「イブキちゃんも喜んでいます」
母親は耳をイブキの胸に当て
「おかえりなさい」
イブキも母親を優しく抱きしめて
「ただいま」
完
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