6人が本棚に入れています
本棚に追加
気紛日-Whim day-
帰り道、帰り道。
(学校帰りー、歩道橋、歩道橋ー)
ふらふらと一人帰り道。至る所に人、人、人。
ガシャンっと音を立てて歩道橋にもたれかかった。まるでフェンスのような音。もう結構ぼろいようだ。
「ここだったらいいかなー」
電車が下を通過する。ここは五分もせず次の電車がやって来る。その気になればいつでも飛べる。
背中をぼろい歩道橋に押し付けてそのまま体を逸らし始める。視界が空へ、架線が映った時だった。微かに視界の先に電車がやって来るのが見えた。電車が独特のクラクションを鳴らす。
微かに口角を上げて目を閉じた。
「危ない!」
「!」
急に体が引っ張られて視界が灰色に染まった。いつもの鉄橋、歩道橋。コンクリート。
「落ちたらどうするんですか!」
何が何だかわからない。目の前には髪の長い……男子制服を着た女子がいた。
「……えっと、みずき、ちゃん?」
学校で見た時、女子生徒がそう呼んでたのを思い出した。
「話を逸らすな! 落ちたらどうするんだ、電車も来てたし死ぬところだったんだぞ!」
翡翠色の瞳が見開いた。目の前の彼女は本気で自分を心配しているようだ。
「あ、うん。そうだね。ありがとう」
「それと、私は男だ」
最初のコメントを投稿しよう!