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彼もまた駅の方へと歩いて行く。
改札口を通り駅のホームへ立つ。
毎回思う。人身事故を起こす人の気とやらを。人の足を止めさせてそれで死んで何が面白いのだろうか? でも、跡形もなくっていう意味でなら確かに興味はあるかもしれない。ただの肉の塊がミンチになるくらいにしか変わらなそうだが。
「はぁ……死にたい……」
ちらっと駅のホームを眺める。電車はまだ来ない。駅の線路ってレアだと思う。普段は電車が通るので人が立ち入ることは出来ない場所だ。時と場合において。
ふと鞄に吊るしていた鈴の付いたキーホルダーに目を向ける。次に天井に吊るされた電光掲示板と見比べる。赤字で次の電車の時刻等を知らせている。
「………」
幸稔は鞄からキーホルダーを外してホームの方に投げた。誰もこちらなんて見ていない。
シャリンっと小さな鈴の音を響かせて線路の方へ消えた。
特に躊躇いもなくホームを降りた。それには居合わせた人がざわつき出した。
(うるさい、一体なんだっていうんだ。ちょーうざい)
「君、何してるの電車来るよ」
「あ、ああ。キーホルダー取れちゃったみたいで。こっちに落ちたっぽいから……」
キーホルダーくらいで、といった表情をする老け込んだサラリーマンを無視して、キーホルダーを探す。
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