side蓮見桂 ⑤

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「ユミ?」    しばらくの()。下ネタはやっぱりまずかったかな。どうしよう。とにかく冗談だよ、って謝って……。 「……蓮見、ホントにいいのか?」 「え? なにが?」  思ってなかった言葉に、今度は俺がユミを見つめて聞き返す。   「……俺……男なんだけど……」  消え入りそうな小さな声。弱弱しく、肩を落としている。 「……なんだよ今さら。知ってるよ」  ユミが言いたいこと、ちゃんとわかってる。男同士である俺達には「普通の付き合い方」って難しいのかもしれない。他人からの目が、全く怖くないわけじゃない。  でも、俺は身構えずに思っていることを素直に伝えた。 「俺さ、ユミが初恋なんだ。もちろん両思いって言うのも初めて。だから正直わかんない。この気持ちがどうなるのか、これから俺達がどこへ向かうのか……けどさ、それはユミが男だからってわけじゃない。俺がまだ、恋愛初心者だからわからないだけだと思うんだ。……だからさ、ユミ、こっち向いて?」  ユミは俺の言葉に、おそるおそる顔を上げた。まだ怯えるような顔をしている。でも、そんな表情は学校でも見たことがなくて……きっと、成瀬やサキも知らないだろう。  ユミが、ユミの好きな俺だけに見せる顔。大事にしたい。そして、笑顔に変えてやりたい。  大きく息を吸い込む。ありったけの思いが届くように、言葉に心を込める。 「ユミ、俺と付き合って下さい。これから毎日を俺と過ごして、先のことも一緒に考えて行こ! 俺、ユミと一緒にいたい。ユミと色んな経験したい。わかんないことは、全部ユミと知って行きたい。だから……俺と一緒にいよう!」  ユミの顔が夕焼けと同じ色になる。今にも泣き出しそうな、俺にすがるような表情で。  あー可愛い。可愛い。可愛い。笑顔もいいけど、こういう表情もやっぱり堪らない。結局俺は、ユミのどんな表情も好きなのだ。  でも今は、とりあえず安心して、笑ってよ、ユミ。 「ユミ」 「ん?」 「好きだよ。大好き。無茶苦茶好き。宇宙一好き。言っても言っても足りないくらい好き!」  これが、今の俺の嘘偽りない気持ち。だから、声を大にして言える。  ユミは一瞬キョトン顔。  それから。  弾けるように笑った。    ──カスミ草、満開。  小花が一斉に開いたかのようなユミの笑顔が眩しすぎて、夕日さえ白く霞む。凄い威力だ。  そして。思う。  オレの青春(アオハル)はユミそのものだ。青でも黒でもなく、ユミ色(まっしろ)だって。  俺、さっき「先のことはわからない」ってユミには言ったけど、頭の中にはカスミ草の花言葉が浮かんでいた。  カスミ草の花言葉は「清らかな心、永遠の愛」  俺の隣を笑顔で歩くユミを見ながら、オレはこの可憐で清らかなカスミ草を、俺のそばで永遠に咲かせ続けようと強く心に誓ったのだった。   ❁アオハルはカスミ草の色❁       終わり
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