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おい、もう本当にやめてくれ。好きな子の前でそんな話。ていうか、昨日お前ら一緒に帰ってたな……ユミとサキって、幼稚園からの幼なじみだって言ってたもんな。サキは俺の知らないユミのいろんな顔を知ってるんだろうな……。
……ダメだ。またこんな女々しいことを考えてる。ユミを好きな気持ちをすぐに忘れられなくても、嫉妬とかそう言うの、するなってば、俺。
心臓がぎゅむ、と痛むと、何故だか怪我した手も痛む気がして、反対の手で軽く支えた。
と、間を置かずにユミが俺のそばに寄り、手に触れる。
「大丈夫? 痛むのか? これ、花屋の仕事でやったの?」
「わっ……!」
突然の至近距離のユミに驚き、思わずのけ反ってしまったばかりか、ユミの手を振り払ってしまう。
場の空気が一瞬固まり、ユミは訝しい顔をして俺を見た。
しまった……挙動不審過ぎる。
「ご……ごめん。触れられるとやっぱ痛いかも。あっ、そうだ、俺、あっちに用があるんだ。ごめん、もう行くな!」
居たたまれず、急いで荷物を置いて、用事なんかないのに新顔の奴らがいる席に逃げた。
……あっぶなー。もろ意識してしまった。あのまま顔でも赤くなっていたら、言い訳が厳しかっただろう。
でも、そう言えば、ユミってどうしてうちが花屋だって知ってるんだ? 俺、誰にも言ってないのに……。
***
「あ、俺アホ。体育館シューズ忘れてる。教室に取りに行ってくる」
「オッケー」
六時間目の体育の前。体育館を目前にして忘れ物に気づき、教室前の廊下の個人ボックスを目指して戻った。
すると、ひそひそとした話し声が聞こえてくる。
「いやー、これは方向修正必要じゃね?」
「やっぱ、そう思う?」
そこにいたのはサキと成瀬。声をかければいいことだけど、朝のサキの下ネタの毒気が抜けない俺は、そっと身を潜めてしまった。
「ユミのことなぁ。もうひと押しだと思ったんだけどさ……」
成瀬の声。
「いや、実際そうだったと思うよ」
こっちはサキ。
「だよなぁ。俺、ユミのことめちゃめちゃ好きだから、早く気持ちが届いて欲しいんだよ」
「わかるよ。でも成瀬が焦っても仕方ないだろ。まあ、俺もなにもできなくて……ごめん」
「いや、アプローチを変えてみるよ。サキ、また協力して」
「ああ、もちろん」
二人は話しながら体育館へ向かって行った。
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