side蓮見桂 ⑤

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side蓮見桂 ⑤

 ユミはすっかりしょげている。  言い終わってから肩を落としてしばらく沈黙し、唇を噛んでいた。  ユミ、泣いているのか? 体を小刻みに震わせて……かわいい。  ユミがこんななのに、俺、ユミがいじらしくて仕方ない……抱きしめてしまいたい。 「ユミ……」  声をかけると、ユミはそろりと俺を見上げた。 「蓮見、俺こんなんだけど、せめて友達でいてくれないか? もう変なことは絶対にしないから……わっ」  懇願する瞳に我慢の決壊が崩れ落ち、ユミを引っ張り上げてベッドの上に乗せた。  ありったけの力でぎゅうぅぅと抱きしめる。 「……友達に戻るなんか、もう無理だよ」 「……蓮見?」 「俺……ユミが好きだ」  言ってユミの口にかじりついた。そして、あの時より大きく口を開き、舌でユミの唇を割って、夢中で舌を中に差し入れる。  ユミは俺の背にしっかりと掴まり、同じように舌を絡ませてくれた。  ちゅ、くちゅり、と濡れた音が耳の中に響く。口の中は互いの温かいぬめりが混ざり、溶けたチョコレートよりも甘い味がした。  どれくらいそうしていたのか。閉まっているドアの向こうで生徒の声がして、我にかえる。  ゆっくりと唇を離すと、ユミはとろけそうな顔をしていて、半開きの唇の端からは、どっちのものかもわからない雫がついていた。  うーわー。なにこれ、めちゃめちゃ可愛いんだけど。なんだ、この顔。 「蓮見がすごく好き」ってもろに伝わってくる。 「もっとキスして」にも見えてくるし……こんな顔を見たら、独占欲がむくむくと湧き出てきてしまうじゃないか。 「ユミ、もう俺以外の(ヤツ)と絶対にキスしたらダメだからな。俺、誰にもユミを触らせたくない」 「だから誰ともしてないって……俺も蓮見が初めてなのに……」  俺に顔を挟まれているユミは、照れて目を反らしがらも唇を少し尖らせた。  そのアヒル口が可愛くて、今度は軽く唇を当てて、吸った。 「は、蓮見……」  さらに照れて頬を紅く染めるユミ。あぁ、可愛い。可愛い。どうしてあの日までこの可愛さに気づかなかったのだろう。  俺はユミを腕で包み、頭に頬ずりをした。  ユミは俺より小さな子供みたいになって、俺に身を任せている。いつもは勝ち気なユミがこんなふうに甘えるなんて、これがツンデレってやつなのだろうか。 「ユミ、可愛い……好き……」 「……ばか。……でも、俺の方が蓮見が好き……」  ユミが俺の体操服の背側をきゅ、と握る。  ──くぁぁぁ。やばい。理性が飛びそう。とりあえずもう一回キスしていいかな? でも……待て、俺。  俺にはまだ不安要素が一つあるじゃないか。
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