side蓮見桂 ⑤

2/4

153人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
「なぁ、ユミ。確認だけど、成瀬の"ユミ大好き"ってなんだよ。あいつ、本当に隙あらばユミを落とそうとしてるんじゃないのか?」 「ばっか。なら協力するわけないじゃん。成瀬は情がすごく深いんだよ。俺がカミングアウトした時も一緒に泣いてくれて、俺に好きな(ひと)ができたら絶対応援する、なにがなんでも成就させてやる、って……そしたら本当に俺より張り切っちゃってさ。だから蓮見が聞いたのもそう言う話しだと思う」 「なるほど……」  なにがなんでも成就って、過激と言えば過激発言だけど、それなら辻褄が合う。  でも……つまり俺は、あいつらに良いように転がされていたわけだ。やってくれるよな。おかげでとんだ遠回りをしてしまったじゃないか。  とは言え、こんなに痛いほどの恋心に気づけたのも、あいつらのおかげか。  初恋が幼稚園の先生の「恋愛旧石器時代」の俺だ。ユミへの恋心に気付いたところで、そのうち男相手に恋をしていることに悩み、自分からは行動できなかったかもしれない。そうだ、今だってユミから思いを聞かせてくれたんだから。過去も悩んだことも全部全部打ち明けてくれて、俺をずっと好きでいてくれたことも教えてくれた。  キスも……ユミから仕掛けてくれなければ、俺はこの恋心を知ることさえできなかったかもしれない。 「ユミ……マジで好き。めちゃめちゃ好き。離れたくないくらい好き」  ユミが心を隠して頑張ってくれた分、何回でも伝えようと思った。俺を好きになってくれてありがとう。勇気を出してくれてありがとう。俺、これからたくさん「好き」を還していくから。  ユミは俺が「好きだ」と言うたびに、俺の胸の中でうん、うん、と頷いて、鼻をすすっている。喜んでくれているのがわかって、また何度でも伝えたくなる。  でも……。 「なあ、ユミも言ってよ。聞きたい……」  ユミの可愛い顔で言って欲しくて、つい強欲になってしまう。 「蓮見、なんか人格変わってない……? でろでろに甘いんだけど……そう言うキャラだっけ……」  ユミは照れっ照れになって視線を斜めに落とし、顔を俺の胸から離した。  でも、もう逃がすもんか。俺はユミのうなじを引き寄せ、顔をさらに近づけた。 「ユーミ。言って」 「~~。……好き! 好きだよ、もう充分わかってるくせに!」 「主語述語がない。なんなら形容詞まで入れて」 「お前なあ……」  赤い顔のユミが、あきれたように溜息を吐く。でもすぐにまっすぐに俺を見た。 「……俺は、蓮見が好きだ。凄く」  決意表明みたいな、強い口調。俺の腕を掴む手にも、力が入る。  くーーーー!! これだよ、これ。これが両想いってやつ!  俺はユミの頬を挟む手に力を入れて、またユミにキスをした。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

153人が本棚に入れています
本棚に追加