side蓮見桂 ⑤

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   柔らかい唇を幾度も重ね、下唇を甘噛みし、ちゅるりと吸う。ユミがねだるように舌でつついてくると、俺も舌を伸ばしてユミの舌を撫でる。そのうち、互いの唾液が同じ温度と粘度で混ざり合って、心も体も一つになっていく。俺達二人、蕩けてキスに溺れていく……。 「……ん、はす、み…ぁ、ん……待って、なんか、冷たい」 「ん? ……いいとこなのに……わ、本当だ。ユミ、ほっぺたから血が出てる!」  ユミの右側の頬に、赤い血が滲んでいた。俺、頬を強く挟み過ぎた? 「違うって。蓮見の左手だよ。ほら~興奮するから、傷がまた開いたんだろ。これだから恋愛旧石器時代人は」 「うっさい。ユミも同じようなものじゃないか。……ていうか、マジで痛いかも。流石に二回も傷が開いたらヤバイよな」  言いながら、また目の前がチカチカして、目の前に暗幕がかかった。 「蓮見!? 蓮見! 大丈夫か……!」 「ユミ……」  ユミの声が遠退いていく……。   ***  結局このあと、ユミに付き添われて病院に行き、四針縫う羽目になった。でもずっとユミが居てくれたから、得した気分だ。  こう言うの、怪我の功名って言うんだっけ? そうだよな。この怪我がユミの気持ちを聞くきっかけを作ってくれたのだから。  だからこのケガは必然だ! ……と言うことにしておく。 「あ~。もう日が落ちちゃったな。遅くなってごめんな、ユミ」  病院から出たら、外はもう夕焼け色だった。  十一月の夕方の空気は少し冷たくて、俺達は自然と肩がくっつくくらいに体を寄せて歩いている。 「全然。それより痛む? しばらく不便だな。手伝えることがあればやってやるから、言ってよ」  ユミが左手をさすってくれる。包帯ごしなのに気持ちいい。それに、顔が近くて幸せ。ユミはやっぱり可愛いし、いい匂いがする。 「うん。まぁ、左手だしなんとかなるよ……あ、でもサキが言ってたよな」 「うん?」  ユミが猫目をくりくりさせて、俺の言う意味を理解しようと見つめてくる。でも、ぴんとこないみたいで……。 「誰かやってくれる子いるの? って。ユミ……俺がもしたまったら、やってくれる?」  恋愛旧石器時代の俺がこんな下ネタを言えるようになるなんて。でも、ちょっと意地悪して、頬を紅くするユミを見たいから、にやりと笑って言ってみた。 「……蓮見、マジで人格変わってない?」  ユミはぴたりと歩みを止め、俺の左手にデコピンならぬ手ピンをした。 「いったあ! ユミ、酷い!」 「調子に乗るからだよ」  そう言って、ふん、と鼻を鳴らしたけど、そのあとユミは立ち止まったまま顔を下げ、考え込むように黙った。
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