2人が本棚に入れています
本棚に追加
001(プロローグ)
黛(まゆずみ)ゼノと近山淳史(ちかやまあつし)は保育園からの付き合いで仲が良い相棒だ。同じ小学校、同じ中学校、同じ高校と、クラスは違ったが、同じ道を歩んできた。2人は高校卒業をしたが、一月しか働いてない。それからは、いわゆるニートだ。毎日、淳史の家を拠点に遊んでた。
ゼノと淳史は家電量販店で新作のVRゲームを物色する。
「これも面白そうだな~。いや、こっちも面白そうだな~。アッツ、どれにしよう」
「やっぱ得意なシューティングゲームにしようぜ」
VRゲームはピンきりだ。安くて数万円。高い物だと100万円を超える。
2人を見ていた女性店員が声を掛けてきた。
「お客様、VRゲームをご所望ですか?」
「そうなんだけどさ。どれが長く遊べるか」
「AV機器の事なら私にお任せを。長く遊べるなら、〝セーブザウォー〟がオススメですよ」
ゼノは、女性店員のネームプレートを見る。〝御雪菜祭〟と書かれていた。可愛らしい顔とは裏腹に、堅物のような名前だ。
「ごゆきさん。セーブザウォーはいくら? どんなシステム?」
「ごゆきじゃなくて、御雪菜(おゆきな)です」
「珍しい名前だな。すまん」
「セーブザウォーは、1セットで30万円ですが、レンタルなら月2500円ですよ。大規模戦争ゲームでファーストパーソンビューのシューティングです。欧米では先行発売されていて、すでに8000万人がプレーしてますよ」
「買った! 2つくれ」
「良心価格にディスカウント致しますよ。2セットで52万円でどうでしょうか」
「良心AV嬢だな」
ーー3日後の昼。淳史の自宅にセーブザウォーが配達された。カネを出したのは金銭的余裕があるゼノだ。淳史はゼノにメールを送る。
『セーブザウォーが届いたぞ。来い』
『すぐ行く』
ゼノはマイカーのR32スカイラインGTRで淳史の自宅へ行くと、デカい段ボール箱が2つ、淳史の部屋に並んでた。
「ゼノ、組み立てようぜ」
「おお」
セーブザウォーの筐体はマッサージチェアのような椅子と、脳波を読み取るヘッドマウントディスプレイがセットになってる。
ゼノと淳史は、筐体のセッティングに格闘していると、カシャンカシャン。
「おじさん、お兄ちゃん。粗茶です」
淳史の姪っ子の凜(りん)が紅茶を運んできた。
「おっ、凜。粗茶なんて難しい言葉を覚えて。いくつになった?」
「5歳だよー」
「大きくなったな~」
「ゼノ。手、出すなよ?」
「出さねえよ。さすがに犯罪だ、アハハ」
「おじさんとお兄ちゃんは悪いことをしてるの?」
淳史は、凜からお盆を受け取ると棚に置いて、凜をクルっと180度回して部屋から追い出す。
「お、おじさん…………」
「またな、凜」
ゼノは紅茶を一口飲んで休む。
「こっちは出来たぜ。ゼノの方はどうだ?」
「難しい、頭痛い」
「良心AV嬢め。ディスカウントした分は、無料設置サービスを削りやがったな」
「仕方ねえさ。8万も安くしてくれたんだから」
30分ほどして、ゼノもなんとか完成させる。
「まずはログインして、チュートリアルだな。ゼノとボイスチャット出来るかも試さないと」
「めんどくせえ。さっさと実戦しちゃお」
2人はログインしようと、ヘッドマウントディスプレイを被ろうとした時、淳史の姉の〝ゆかり〟が来た。
「ねえ、2人とも。凜を見なかった? どこにも居ないのよ」
「さっき、紅茶を持ってきてくれたけど」
「何か嫌な予感がするな。アッツ、ゆかりさん、家の周りを探そう」
ーー凜は、近くの川で遺体で発見されたーー
ーーそして、ゼノが重要参考人として警察署へ任意同行されたーー
最初のコメントを投稿しよう!