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ヒートショック
真っ赤なFD3Sの女ドライバーはゼノ達に声を掛ける。小柄でポニーテールの可愛らしい見た目とは裏腹に度胸がある。
「君達も走りに行くの?」
「今夜ね」
「サーキットじゃなくて、山に行くつもり?」
「まずは、定常円旋回からやるよ。姉ちゃんは走り屋か?」
「これでも、南木曽峠の良心って呼ばれてるのよ。このシルビア、2人で1台でやるの?」
「俺はGTRでやってるよ」
「Rいくつ?」
「R32だ」
「クラシックカーね。私は、田路木(たじき)スタン。宜しく」
「俺は黛ゼノ。こっちは相棒の近山淳史。宜しくな」
「よろ」
「2人とも、立端あるわね。モテるでしょ?」
「そりゃもう」
「フフフ。じゃ、今夜、南木曽峠で会いましょ」
スタンはFD3Sに乗り、爆音を轟かせながら颯爽と去っていった。
「ここにも、良心AV嬢か」
「なんか違うな。飯だ飯だー」
2人はコンビニに入り、食料を調達する。支払いは、ゼノの電子マネーだ。その代わり、帰りはゼノがシルビアを運転する。
「壊すなよ?」
「国道で卍切りでもやろうか」
「やめろっ!」
「冗談冗談。まずは開けた所で定常円旋回だな」
「円書きってやつ? ダートでやっても意味ある?」
「ターマックオンリー」
「近場でどこにある?」
「運動公園の駐車場」
「捕まらない?」
「運次第。風呂上がりのヒートショックで死ぬくらいの確率だな」
「マジかよ。俺も学校サボってドリフトやってりゃ良かった」
ゼノは、シルビアを運転して淳史の家に帰ってくる。駐車スペースに停めて、サイドブレーキを引き、スピンターンノブを引っ張る。
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