2人が本棚に入れています
本棚に追加
003(エアハート)
ゼノは黒塗りのセダンを降り、淳史の家の駐車スペースに行く。無事にR32スカイラインGTRが停まっていた。近くの川には規制線が貼られている。
「凜…………」
「ゼノ!」
淳史が家から出てきた。ゼノはどうしたらいいか解らない。
「アッツ…………俺」
「凜を殺したか?」
「殺してなんかいないよ! アッツまで疑うのか!? じゃあな!」
ゼノは怒りに満ちた。急いでGTRに乗り、自宅へ帰る。淳史は何か叫んでたが、ゼノには届かなかった。
ゼノは自宅に着くと、父親が鬼の形相で待ち構えてた。
「ゼノ! 人を殺したのか!? 自首しなさい!」
「うるせえよ、酒乱。事情も知らないで決めつけるな。雑魚カスバカアホナード」
ゼノの父親はアルコール依存症で手がブルンブルンと震えてる。おまけに2型糖尿病のクズだ。
「訳の解らないことを言うな! 警察を呼ぶからな!」
「勝手にしろ」
ゼノは、冷蔵庫から缶ジュースを取り出して、GTRに戻る。そして、黒いスーツを着た男から渡された薬を飲み、〝エアハート〟をする。
ゼノは、すぐに黒いスーツを着た男にメールを送る。
『エアハートをしましたが、特に問題なしです。それと、お願いなんですが、凜を殺害したホンボシを捕まえて拷問してください』
『一安心だ、ありがとう。そっちの事は組織の別動隊に任せよう。黛君、知らないようだけど、凜さんが殺された日に、近くのりんご狩り園で銃殺事件が起きて3人亡くなってる。私は、他の組織が動き出してると推測してる。黛君も気を付けてくれ』
ーー次の日曜日。凜の葬式があった。ゼノは行くか行かないか迷っていた。そんな時に淳史からメールが入る。
『葬式に来ないのか? 線香を立ててやってくれ』
ゼノは、この一言で少し楽になった。淳史はゼノを犯人扱いしてない。しかし、凜の身内には、ゼノに対し心ない考えを持つ者も居るだろう。ゼノは返信する。
『行くよ』
最初のコメントを投稿しよう!