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光のトンネルを抜け、辿り着いたのは、誰もいない廃墟と化した病院だった。
なんでこんなところに出すんだよ。
『すみません。人気のないところでないと不可思議現象になりますからね』
店員の声が脳裏に過ぎる。
『ちなみにこちらとは常に交信できる状態にありますので、お戻りの際はこちらにご連絡下さい』
なるほど。それは便利だ。
そういえば、先ほどリミッターを外したみたいだけど、霊を見る以外に何かあるのか?
『俗にいう霊能力というのが発揮できますよ。現世にいる霊能力者と呼ばれる方々はこのリミッターを外した仮の肉体を使っています』
それはすごいことを聞いてしまった。
俺は歩き出す。
それにしても、薄気味悪いところだ。
早く出よう。
俺は廃病院を出た。
店員さん、この女性の名なんだけど。
『特にこちらでは決めていません』
そうか。
家、帰るか。
俺は生前の家に向かった。
俺の住んでいた家はボロいアパートの一室だった。
俺が亡くなったということで、生活に使われていた家財等は全て運び出されていた。
あ、よくよく考えてみれば、俺無職じゃん。金ないから家に住めないじゃん。
どうしよう?
『お戻りになられますか?』
いや、いい。
そういえば、近くに住居支援があったな。
俺はNPO法人の住居支援所へと向かった。
住居支援を受けた俺は、仕事を探す。ホームレスにはなりたくないからな。
近くの職業安定所へ足を運び、求人票を確認する。
だがしかし、自分に合いそうな職は見つからない。
そうだ。
俺は最寄駅の交番に移動した。
「どうされました?」
警察官が訊ねる。
「採用パンフレットありますか?」
「少々お待ち下さい」
警察官が机の引き出しを開けた。
「こちらですね」
「ありがとう」
俺はパンフレットを受け取った。
「お嬢さん、連絡先教えてもらえますか?」
「あ、すみません。私、今、家なくて。住居支援受けてる身でして、電話も携帯もなくて」
「そうでしたか」
「それじゃ」
俺は交番を出る。
事故の日、実は俺は警察官採用試験に合格し、警察学校に向かっている途中だった。
だが、不運なことに死んでしまったのだった。
「さて」
住居に戻り、書類に必要な情報を書き込み、ポストに投函する。
後日、中途採用の採用試験を受け、見事合格した。
その後、警察学校での厳しい教育を受け、晴れて現場へと配属になった。
配属先は、警視庁である。
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