夏に出会い 夏に別れ 夏に再開する

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夏に出会い 夏に別れ 夏に再開する

君も 俺も この田舎で生まれ育った。 近所に近い歳の子なんていなかったから、俺達はいつも一緒に過ごしていた。一緒に山や川で、暗くなるまで遊んだ。帰ろうと焦っていたら、明かりのない橋の上で、君が豪快に転んだ。 泣いている君の手を引いて、俺は君を家まで送り届けた。もちろんその後は、両親からのお説教が待っていたけど。 でもお説教を受けている間、俺はずっと君の怪我を心配していたんだよ。夜道で暗かったから、傷の具合を確かめられなかったから。 でも君の膝から血が出ている事が分かった時は、俺の血の気が引いたよ。 「大きな怪我だったらどうしよう・・・」って、ずっと頭の中で悪い妄想が膨らんでいた。 でも数日後には、何もなかったようにまた俺と一緒に遊んでくれた。でも、俺の気持ちは晴れないまま。 もうあんな痛い思いを君にさせたくなかったから、俺はその後、遊んでいる間は太陽の傾き具合をチェックするようになったんだ。 俺達が住んでいる村にコンビニやスーパーなんてなかったから、毎日来る販売車でおやつを買っていた、夏の蒸し暑いお昼時。 棒アイスを路端で落としてしまった君に、俺は自分の買ったラムネを分けてあげた。 でもラムネの瓶に付いていた水滴で、俺の手からラムネが逃げて、そのまま川の中に・・・。 それで喧嘩になっちゃったけど、販売車のおじさんが、俺と君に新しいアイスをくれた。 今度は落とさないように、慎重に公園のベンチまでアイスを運んだんだけど、今度は溶けてドロドロに。 それを見て俺達は大笑いしながら、溶けたアイスを啜った。普通の100円アイスだったけど、すごく美味しいかったよな。 月日が経って、俺達が小学校に上がっても、俺達の関係は変わらないまま。田舎の学校だから、1・2・3年生は同じ教室で勉強してた。 先生も数人しかいない、まさに田舎の学校だったよ。クラスメイトは、俺と君を合わせても数人しかいない。 でも友達が増えた事は、すごく嬉しかったよ。友達が増えたから、君は自然と俺から離れて行くと思ってたけど、そうでもなかったな。 学校の行き帰りには、いつも君が隣を歩いてくれた。片道だけでも一時間くらいかかる、相当長い道のり。 でも、俺にとっては一番楽しい時間だったよ。学校の授業中も、下校時間をまだかまだかと待ち望むくらい。 学校内では、やっぱり自然と男女別々に行動しちゃうけど、君が女友達とあどけなく話している姿を、俺はずっと見ていたんだ。 ここまでくると、さすがに気持ち悪いと思われても仕方ないな・・・。 でも、俺には見せない君の女の子らしい姿に、俺の目は釘付けだったんだよ。もちろんクラスには、君以外の女の子もいる。けど君の姿を自然と目で追ってしまう自分は、もうすでに君の事が好きになっていたんだ。 でも、 そんな俺の気持ちは、 結局伝えられずに終わってしまった。
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