高橋由一(豆腐)

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ビニール袋をあけて、中身をテーブルの上に並べた。 「うわぁ、鯖寿司!私の好きな光り物。しかも、高級なやつ。ありがとう」 私はコハダ、アジ、サバと光り物に目がない。お寿司屋さんにいっても、光り物ばかり注文するので大将に「光り物」のネタを勧められる。私は大将の勧められるがままに、光り物をパクつく。油のノリと酢締めの加減が、絶妙に美味しいのよねえ。 「帰りに百貨店の催事で、美味しそうな鯖寿司見つけたから、買ってきた。好きだろ。鯖寿司?」 「大好き!ありがとう!」 私はスーツを脱ぎかかっている旦那様に抱きついて、頬ずりした。 「もう、そんなことしたら着替えられないだろ。犬じゃないんだから」 旦那さんは部屋着に着替えて、私たちは向かい合ってダイニングテーブルについた。 「サバズシ!サバズシ!でも、どうして?」 「今日、弁当メインのおかず二つだっただろ。ミートボールと塩ジャケ。俺は、珍しいなって思って、少し思いをめぐらして、ははぁ、そういうことか、と得心がいった」 えっ、何を考えたのかしら?ただ、入れ間違えただけなのに。 「やっぱり、気づいたんだ。さすが、えらい!素敵!できる男は違いますねえ!」 「これは恵美のメッセージだ。仕事を頑張っている俺への、ねぎらいだ。感謝の気持ちだと。シャケのように立派になって川に帰ってこいと。つまりそういうことだ」 どういうことだ?最後がよくわかんないけど。 「いつもお仕事大変だもの。毎日シャケをいれてもいいけど、塩分の取りすぎは体によくないからね。でもたまにはいいかなって!」 「俺もいつも美味しいお弁当を作ってくれる恵美に、何か感謝しなければならない。そう思うのは人として、当たり前だろう」 なんか政治家の答弁みたいだけど。まあ、いいか。 「いや、私、そんなに、なんていうか、好きでやってるっていうか、朝型人間だし…お母さんもずっと私に作ってくれてたし…」
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