王子さまと酔っ払い

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王子さまと酔っ払い

「その星には酔っ払いがいてね、いつもお酒を呑んでいたんだ。」 せっかく直りかけたオートバイのエンジンが、またうんともすんとも言わなくなっていた僕は、酒でも呑みたい気分だった。 「大人になると、時々そんな気分にもなりますよ。嫌なことを忘れたいとか、ふさいだ気持ちを解消したいとか。」 「彼も言っていることは筋が通っていたけれど、何もしようとはしなかったんだよ。おとなってそんなものなのかな。」 王子さまのことばに何も言い返せなかったことを僕は思い出していた。 ゆきと結婚して3年。僕は口先だけで何もしてこなかったのかもしれない。他人の作品を批判することだけは一人前でも、自分ではまともに小説も書けやしない。 いや、書こうとすらしていないんだった。 酔っ払って何もかも忘れてしまいたいと思ったが、王子さまのことばが重くのしかかっていた。 「何もしようとはしなかったんだよ。」
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