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王子さまとバラの花
「ぼく、この星へやってきて、ある日、とてもきれいなバラの花たちに出会ったんだ。」
単気筒エンジンのプラグを掃除してはめ直している最中に王子さまに話しかけられた僕は、ちょっとイライラしていた。
「花なんてどこにでもあるじゃないですか。珍しいものでもない。」
「でもね、その時ぼくは自分の星に残してきたあの花のことを思い出したんだ。」
「それがどうしたんですか。」
「この星で観たバラの花たちにぼくはこう言ってやったんだ。きみたちは綺麗かもしれないが、ぼくの星のたった一輪の花は、か弱くて本当はいつも心が折れそうなのにせいいっぱい意地を張っていたんだ。きみたちとは違うよ、って。」
ふてくされてそっぽを向いているゆきに向かって、僕はそんな話をしてみた。
「あんた、バカだね。そんなおとぎ話みたいなこと言ってさ。」
こちらを見ずにぽつりとつぶやいたゆきの背中は小刻みに震えてた。
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