王子さまと天文学者

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王子さまと天文学者

「その星には天文学者がいてね、いつも望遠鏡で星をながめているんだ。自分だけの星を見つけるって言って。」 「そりゃあ、自分だけしか知らないものが見つかれば嬉しいでしょうね。」 僕はオートバイのエンジンが動かない原因を新たに見つけたつもりになっていた。 「でもさ、新しい星をみつけて、それに番号をつけて終わりってたのしいかな? もっといろんなひとに教えてあげたくならない?」 「大人は独占したい欲があるんですよ。自分だけが知っているって。」 「そんなものなのかな。」 そう。僕は今また新しい小説のネタを思いついて、それをゆきに話していた。自分だけが発見したようなお話だと、さも自慢げに。 「あんたの今の話、あの本で読んだのにそっくり。オリジナリティに欠けるね。もっと視野を広げた方がいいよ。」 そうか。まさに独りよがりだったのか。遠くに見つけたつもりの星が珍しくもないありふれたものとは。
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