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王子さまと実業家
「その星には実業家がいてね、毎日ずっと紙とにらめっこしてブツブツ言ってるんだ。」
砂漠の真ん中で壊れたオートバイの回路図を見ながら、ああでもない、こうでもないと僕は考えていたから、自然と何かつぶやいていたのかもしれない。
「それがどうかしたんですか?」
「おとなって大変なんだな。お金のことばかり考えて、って思ったのさ。」
「そうそう。大人は生きていかなきゃならないんで、お金を稼ぐことに必死なんですよ。」
「そんなものかねえ」
王子さまとのやりとりを思い出し、今こうやって目の前にある請求書の数々とにらめっこしながら、僕は悩んでいた。
「あんたの稼ぎがないから、あたしがこうやって働くしかないんでしょ。その分、しっかりと小説書きなよ。」
本当に申し訳ない。ゆきに対して平身低頭するしか僕にはできなかった。
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