王子さまと点灯夫

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王子さまと点灯夫

「その星には点灯夫がいてね、毎朝日が昇ると明かりを消して、夜になると街灯に火を入れるんだ。働き者だよね。」 「僕もそれくらい働いたら、ここから脱出できますかね。今はこのエンジンをなんとかしなきゃ。」 「でもね、その星の回転はだんだん速くなって、あいさつがどんどん短くなっていったんだ。」 「そりゃあ忙しくなれば、挨拶だっておろそかになりますって。」 「そんなものなのかな。あいさつはだいじだよ。」 僕の書いた小説が偶然にも売れて、それからとても忙しくなった。毎日のように原稿に追われ、寝ている時間も惜しむくらい。寝ているかパソコンのキーを叩いているか、そんな毎日が続いた。僕の中には、王子さまの見た実業家がいたのかもしれない。 自分には夢があって、同じ夢を彼女も観ていてくれると思って、毎日を楽しくいっしょに生活していけたら幸せだと思っていた。でも、いつの間にかのすれ違い。 しばらくして、ゆきが突然いなくなった。
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