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「ここにいると思ったんだ。」
そう言ったおばちゃんと2人並んで、公園のブランコをこいでいる。
知らないおばちゃん。
小学校2年の子供が知っているおばちゃんなんて、友達のお母さんがせいぜいで、隣でブランコをこいでいるのは、全く知らない人間だと断言できる。
「知らない人と、話しちゃダメって、お母さんにいわれてるよね。」
小さく頷く私を見て、おばちゃんは少し笑った。
「ミーちゃんはさ…一匹狼だよね。」
「一匹狼?」
ミーちゃんって…なんで名前知ってるの?
「女の子同士で、グループにならないってこと」
「ならない。悪い?」
なんで こんな事言われないといけないんだ。
「別に悪くない。むしろ…いいよ。カッコいい。」
「え?」
お母さんには、いつも友達と仲良くしろ、みたいな事言われてるのに。
「一匹狼のミーちゃん、カッコイイ。大変な時もあるけど、一匹狼を頑張って つづけて。」
「…おばちゃん、なんでそんな事いうの?」
「おばちゃんも、一匹狼で、子供のころ そう言われたから。言われて嬉しかったから。」
「おばちゃんも?」
「そう。だから、ミーちゃんにも言いにきたの。」
「ふーん。」
「ミーちゃんも、大人になったら 一匹狼の女の子に言ってあげて。」
「うん。」
「分かった?」
「うん。」
「あっさりしてるね。」
「そう?でも おばちゃんが言ってること分かった。」
「そうか、良かった。」
ニコッと笑うと、おばちゃんは シューっと消えた。
後には、おばちゃんがこいでたブランコが揺れてる。
消えた…。
なんで?
さっぱりカラクリは分からないけど、不思議と怖くない。
一匹狼カッコいい! だって。
おばちゃんが言ったとおり、何だか嬉しい。
「それで、お母さん昔の自分に 言いに言ったの?」
息子のワタルが、呆れたように言った。
「そう。」
「ま、いいけど。普通はタイムマシンに乗れるって言われたら、もっとドラマチックな事をすると思うけど。」
「だって、代々の自分との約束っていうか。」
「そうだね。ある意味。そしてお母さんらしい。」
まぁね。あなたの母親は、そういう人間ですよ。
一匹狼のミーちゃん。
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