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死ぬことを目標に、ゆっくりと蛇の様に這いずった。
桃の匂い、ナツメグの匂い、銀杏の匂い、シナモンの匂い。
匂い匂い匂い。
どんな、匂いも私を止める事はできなかった。あの時の金木犀の香り以外私を止める事はできない。
解脱する時の仏様はこの様な心待ちだったのだろうか。
沙羅双樹の香りがした。
そんな匂いも気にせず這う。
腹から血が垂れてきた。私が通った道に血を残して私は這う。最早、血も出なくなると沙羅双樹の花を嗅げば良かったと思った。
香水を買えば良かったのかもしれない。
会社に行けば良かったのかもしれない。
そのまま、彼は這い続けた。
多分、まだあの匂いを探してるのだろう。
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