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変だと思いながら、女の前を通った。
どんな服を着ていただろうか…。
女からは金木犀の香りがしたのだ。その香りが強烈で美しく、服なんて目につかなかった。
どんな香水でもない匂いだった。
自然のままの香りだった、それからはとんとん拍子だった。
女の近くの席に座り、目を修行僧の様に瞑り、彼女の匂いが来るのを待っていた。
彼女の度々香る匂いが、彼女の存在を僕に教えてくれていた。
会社からの電話も、電車の中の雑踏も顔の耳に入らなかった。
鼻腔を酷使したせいか匂いがしないと思い、目を開けて彼女の所在を確認したが最早いなかった。
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