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「それでは発車しまーす!!
いってらっしゃいませ!!」
…行きたくないっての!!
緩やかなスタート。ゆっくりと上昇。
相手もこちらの出方を窺っているらしい。
ならば、先手を撃ってやろう!
といきたいところだが、そうはさせて貰えないのがジェットコースターだ。
リングに上がった時点で、こちらは防戦一方。耐え忍ぶことでしか勝利は獲られない。
いや…勝ち目はおそらく…ない。
かなり高い所まで上ったな…
そして…一瞬…目の前が空だけになる。
綺麗な空だな。青くて澄んでる。
それが最後の記憶だ。
後のことは覚えていない。
気付いた時には乗り場に戻っていて…
強制的にリングから下ろされた。
完敗。
隣の彼女は放心状態。
ふたり仲良くノックアウトである。
「大丈夫か?」
「…うん、大丈夫」
ふらふらになりながら歩き出す。
地上は素晴らしい。長閑だ。
「はぁ…予定が狂っちゃったな…」
「…何の?」
「舞くんパワーアップキャンペーンのはずなのに…逆にパワーを奪ってしまった気がして」
ああ…
そういえばそういう趣旨だったな。
「元気になったよ」
「…いいよ。無理しなくて」
「無理なんかしてない。
お前が隣で色んな表情を見せてくれる。
それだけで俺は元気になれるよ」
「…あっ…ありがとう」
ん…?なんだか随分恥ずかしいこと言った気がするんだけれど…気のせいか?
佐倉は急に俯いてしまってるし…
妙な雰囲気が出てしまってる気が…
どうしよう…
「…あっ!あのさ、舞くん!!」
「ん!?どうした!?」
「おっ…お腹空かない?
ほら…もっもうそろそらおひらだひ」
滅茶苦茶噛んだな…
イントネーション可笑しいし…
「そっ…そうだな。
うん。そうしよう」
「うん!!そっそっ…そうしよ!」
年下に気を使わせてしまった…
申し訳ない…
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