秘密

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ワゴンでホットドックとコーラを買い、2人でベンチに座る。 ベンチ…って… こんなに小さかったっけか? 近い… 仕方ないのだ… ここしか座るところがなかったし… それにだ!疚しいことはない…とは言い難いが、下心はない…し? 大丈夫だ…大丈夫…大丈夫…うん… 「あっ…あのさ…」 「ん?どした?」 「いや…舞くんはそのぉ… やっ…!休みぃの日ぃは何シテルの?」 イントネーション…独特だな… また気を使わせてしまった… 「そうだな…」 あれ…休みの日って何してるっけ? 大体、洗濯して、掃除して… とりあえず寝て…起きて…飯食って… 寝て…ってなかなか酷いな… 「特に何もしてないかな…」 「そっ…そっ…かぁ…」 しまった…まずい… 何とかしないと… 「佐倉は…何してるんだ?」 「あっ…私?わったしは… 家でゴロゴロ…したりとか…」 逆効果だった。作戦失敗だ。 「あれだな…天気良くてよかったな…」 「そっ…そうだね!! ホント!!ホント!!よかった…」 どうすりゃいいんだ…こういう時は… 分からん…とりあえず… 「とりあえず…食べようか…」 「うん!!食べよう!!そうしよう!!」 何だろう…このホットドック… 無味無臭だな… 味覚が変になったのか? コーラってこんなんだっけか? 緊張し過ぎだろ。彼女は生徒だ。 この二年と少し、彼女とは何度も話したじゃないか。くだらない話だって、真面目な話だってそこそこしたはずだ。 何を今更緊張することがある? そうだろ?いつも通り…いつも通りだ。 いつも通り…? いつも何を話してたっけ? ああ…ダメだこりゃ… 「やっぱり…ドキドキするな…」 …へっ? 「こうやって、学校じゃないところで、二人で会うことなんてなかったし… いざ、こうなってみると緊張するなって」 ああ…そういうことね… 「そうだな。いつもと服装も違うし、場所も違うしな」 「うん。でも、すっごい緊張はするけど、すっごいワクワクもするかな」 「ああ…確かにちょっと楽しいかもな」 「本当に?」 「ああ、本当に」 「よかった」 「うん…」 「あのさ…」 「ん?」 どうした?急に改まった声を出して… 「このホットドッグ…味しなくない? コーラ…何か…すっごい味薄くない?」 「やっぱり、そうか? 俺もそう思ってたんだけど… 緊張のせいかなと…」 「うん…そのせいかな… って思ってたんだけど… 何か…本当に味しないっていうか…」 「何か全体的に水っぽいな…」 「うん…」 「ハズレだな…」 「ハズレ…だね…」 気付いた時には二人で顔を見合わせて笑っていた。
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