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4週間前定期検診が事の始まりだ。
検査結果があまり良くなかったらしく、念のためと精密検査を勧められたのだ。
健康面に問題があると言われては気になって仕方がない。その日の内に申し込みをして、2週間前、検査をしてもらった。
そして昨日。その結果が出た。
『こちらの勘違いでした。申し訳ありません。』
という恐ろしくポジティブな結果が待っているとまでは思ってはいなかったが、ある程度までの覚悟は出来ていたのだ。
そうある程度の。
精密検査であるため、例えば
『腫瘍がありますので切除しなければなりません』とか『血糖値が高過ぎます』とか。
最悪、『初期の胃ガンです』とか。
何とかなるけれども、検査していなければ不味かったというような、そんな展開を想像していたのだ。
だから担当医の増井医師からその言葉を聞いた時、幻聴か何かなのではないかと疑い、実は夢なのではと考え、逃避したのだ。
そんなはずはないだろうと。
真面目で温厚そうで、きっととても人のよい増井医師の顔には苦いものを噛み締める、複雑な表情が忘れられない。
「検査の結果、スキルス性の胃ガンである事が分かりました。
単刀直入に申し上げますと、手術による回復は見込めません。
今後は薬物療法による痛みの軽減などをメインに治療を進めていくことになります。」
分からなかった。分かろうとしなかった。
落ち着いたフリをしようと必死だった。
「それはどういうことでしょうか?
私は治らないと?」
「申し訳ありませんが、少しでも長く生きて頂く、そのサポートしか私共に出来ることはありません。」
認めたくない。信じたくない。
「私はあとどのくらい生きられますか?」
「明確には申し上げられませんが、春を迎える事が出来るか出来ないかだと思います。
ただ希望を捨てないで頂きたいのです。どんな場…………」
その後、彼が何を言ってくれていたのかまるで覚えていない。
ただその時、なぜか考え始めていたのは卒業式はどうすればいいのだろうということだった。
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