秘密

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秘密

バチが当たったのだろう。 これまで生きてきた30年間、私は両親を恨み続けてきた。 否。 私にこの名前を付けると、決定する判断をさせた神を恨んできたと言うべきだろう。 事実、父は、真面目で優しく、休みの日にはよく私を遊びに連れて行ってくれ、母を心の底から愛していた。 母は、温かく朗らかで、泣き虫だった私をその明るさでいつも笑顔にしてくれ、父を心の底から愛していた。 そして両親共に私の事を愛してくれていた。 今はもうこの世にいないふたりだが、私ももちろん、心から両親を愛している。 だが、この名前はないだろう。 なぜこの名前を付けようと思ったのかと、よく尋ねたのだが、両親共に 「他人と違う名前って素敵でしょう」 という非常に曖昧で、答えになっていないものしか得られず、ふたりは結局旅立ってしまった。 よって今もなお、両親にこの判断をさせた神を恨んでいるという結果になった。 「舞ちゃん、おはよう」 「ちゃんはやめろって言ってるだろ」 担当のクラスの女生徒だ。 彼女でなくとも、私の事を「舞ちゃん」と呼ぶ。「高田舞」これが私の名前だ。 女性ではない。男性である。
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