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理科室に入ると、すでに教室の中にいた人達の視線を一身に浴びてしまう。俺は小さく頭を下げて昨年同じクラスだった松岡の横に座った。松岡は信じられないと言いたげに……というか顔にはっきり書いてあった。全く、失礼な奴だ。
「俺がここにいるのがそんなに不思議か?」
「不思議だよ。昨日新調したメガネの度がやっぱりあってないかと思ってまずは眼鏡を疑ったよ。一体、どういう風の吹き回しで會澤が委員会に入ったんだよ」
俺は仕方なく松岡に俺が委員会に入るまでに起こった顛末を語った。
「お前は相変わらず羨ましいポジションにいるんだな」
「おいおい。お前話ちゃんと聞いてたのかよ。悲劇のヒロインもとい、主人公みたいな悲しい話だろ」
半ば強制的に担任と後ろのうるさい幼馴染からこんな面倒くさい仕事を押し付けられるなんて思ってなかった。それをなんで松岡は「羨ましい」なんて言うんだ?
「海野と仲がいいんだな」
「別に。小さい頃からの腐れ縁だよ」
「結構、人気高いの知ってるだろ?」
「……まぁ、小耳にはさむ程度だけど」
確かに入学したての頃は、よく舞依香の彼氏と間違えれたこともある。そういえば、同学年だけじゃなくて、先輩達からもよく告白されていたっけ。
「全く、まさか海野が幼馴染という利点がありながら清掃委員会に入ってくるとはな……」
「ん? なんで舞依香と清掃委員会が関係あるんだよ」
「バカ。海野じゃない。お前、清掃委員会にあの人がいるって知らないのか?」
「あの人?」
俺が誰か聞こうとしたその時、理科室の扉が開かれた。
「もうみんな揃ってるかな?」
茶色がかった髪の毛先を右手でかき上げる仕草に、この教室にいる男子の目はすべて注がれた。
「沢海先輩……」
「ああ。この委員会には沢海先輩がいるんだ」
朝俺がぶつかってしまった沢海先輩もまさか同じ委員会だったとは……。俺が沢海先輩を見ていると、沢海先輩と目が合った……気がする。先輩は、はっと目を見開いたかと思うとにやりと笑った。
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