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沢海先輩はくるっと体を入れ替え、黒板に綺麗に4文字綴った。
"沢海 渚沙"
「皆さん。今日は急でしたが集まって頂きありがとうございます。私が清掃員会の委員長、3年A組の沢海 渚沙(さわみ なぎさ)です。よろしくお願いします」
沢海先輩がペコリと頭を下げると、理科室は拍手に包まれた。男女問わず大きな拍手を送っているというのは沢海先輩の人望のおかげだろうか。でも少し解せないことがある。
「なぁ松岡」
「なんだよ會澤。俺はいま沢海先輩を見るのに忙しいんだ」
「今日が委員会の顔合わせなんだろ? なんで委員長は沢海先輩に決まっているんだ?」
「あぁ、沢海先輩は去年からこの清掃委員会の副委員長だったんだ。きっとそのまま繰り上がることになったんじゃないか?」
なるほど。そういう背景があったわけか。でも委員長だの副委員長だの、よくやるなぁと正直思ってしまう。でも待てよ……。
「なぁ、松岡」
「ええい會澤! うるさいぞ! 後にしてくれ!」
どうやら松岡は完全に沢海先輩にお熱のようだ……。これ以上話しかけても無駄なようだ。仕方ない。少し、一人で考えるとするか。俺が疑問の思ったのは、一つだけだ。
"なぜ沢海先輩がいるのに清掃委員会は人気がないのか"
マサといい、松岡といい、沢海先輩へは熱い気持ちを抱いている。だが松岡はともかく、マサは清掃委員会ではなく運動委員会へ立候補していた。
「……でいいかな?」
まだマサが立候補するころには清掃委員会も空いていたはずなのに。それともマサは沢海先輩が清掃委員会にいることを知らなかったのか? いや……。
「聞いてる?」
「え?」
コツン、と軽い痛みが頭に残った。見上げると目の前にはニコニコ笑う沢海先輩が立っていた。
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