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「でももう黒板に書いちゃったし。書き直すのめんどくさい」
「め、めんどくさいって……!」
松岡は愕然としているが、隣の俺も驚いている。まさかそんな理由で拒むとは思わなかったからだ。
「それに君、遅刻多いでしょ? 清掃委員会の委員長と副委員長は朝早いから君には向いてないと思うよ」
「その話は聞いています! 聞いた上で立候補してるんです!」
松岡は沢海先輩に必死に食らいつく。しかし、引っかかる言葉が今のやり取りの中にあったぞ。『清掃委員会の委員長と副委員長は朝早い』ってのはどういうことだ? まさかマサもそれを嫌って?
「じゃあ會澤君が譲るって言ったら変わってもいいよ」
「え?」
先輩は俺をまっすぐ見つめ、優しく微笑む。それだけでその場の雰囲気も柔らかくなってしまう。俺の決意は鈍りそうになるが、ここは松岡の……男同士の友情の為だ。断ろう。
「先輩、俺やっぱり副委員長できな……」
「いたっ……」
先輩は膝を抑えて一瞬顔をしかめる。
「渚沙? どうしたの?」
沢海先輩の友達だろうか。黒い髪の女の子が声を出す。
「ううん。なんでもない。今朝、ちょっと人とぶつかって怪我しちゃってさ。そんなに大したことないんだけど……たまに痛むんだ」
いててと小さく言葉を漏らしながら先輩は膝を抑える。その指の隙間からは絆創膏が見える。まさか……あの傷は今朝俺とぶつかったときにできた傷なのか?
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