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「ごめんね。會澤君。話の途中だったよね。それで、返事は?」
沢海先輩は相変わらず笑っている。だけど今回は前とは違う。目だけが笑っていない。もしかして沢海先輩……脅している? いや、沢海先輩に限ってそんなことは……。
「あーいざわくん?」
背中に冷たい嫌な汗をかき始めているのを感じる。ダメだ。きっとこの笑顔には……逆らえない。それに朝、先輩に衝突してしまったことは、事実だ。
「や、やらせて頂きます」
「ほんとっ!?」
「あいざわっ! なんでだぁ……」
ぱっと両手を合わせて沢海先輩が喜ぶ一方で、隣の松岡は机に突っ伏しってしまった。沢海先輩は駆け寄ってくると俺の手を取って俺の目を覗き込んだ。
「良かった! これから力を合わせてやっていこうね!」
「は……はい」
また理科室からは拍手が沸き起こる。その拍手の音に紛れるように先輩は俺の耳元で囁いた。
「お利口さんだね」
背中がぞくっとしたのは先輩の吐息が耳にかかったからとかそんな甘酸っぱいものじゃない。この気持ちはきっと恐怖以外の何物でもない。
「さてと……話が大分それちゃったね。じゃあ改めまして、清掃委員会の仕事内容を説明するね。會澤君、議事のメモは残しておいてね。
「えっ……俺がですか?」
「清掃委員会の仕事はその名の通り、清掃です。いつも放課後にはクラス単位で行う清掃の地域の管理や最終的なゴミ出しの仕事をしてもらいます」
先輩は俺の疑問に答えることなく、説明を続ける。俺は慌ててペンを走らせる。
「そして9月中旬に私達、真澄高校の生徒たちが毎年行っているボランティアイベントである真澄海岸清掃活動の運営、これが一番大きなイベントかな」
真澄海岸清掃かぁ。そういえばそんなこともあったなぁ。俺は先輩の話に耳を傾けながら去年のことを思い返す。
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