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「じゃあ先に行くね! 送ってくれてありがとう!」
「あ、おい!」
舞依香は俺が駐輪場に自転車を止めると同時に飛び降り、そのまま駆け足で校舎の中に消えていった。ったく、なんで俺より先に教室に入るんだよ……。俺は鍵をかけ、後を追おうにも舞依香みたいに走っていく元気はない。
「おーい哲也!」
「マサか、おはよ」
見慣れた黒い自転車から降りてきたのは、中学時代から付き合いがあるマサだ。
「クラス、今年は一緒になれるといいな」
「そっか、クラス替え! だから舞依香の奴、走って行ったんだな」
「おいおい、まさか忘れていたんじゃないだろうな」
すっかり忘れていた。そうだ、進級するということはクラスも変わるということじゃないか! 新しい担任に、かわいい同級生と一緒になれるかもしれないチャンス……。こうしちゃいられない!
「マサ、早く見に行こうぜ!」
「あ、おい、哲也! 前見ろ!」
マサの腕を無理やり引っ張り、走り出したその刹那、俺は強い衝撃を受けた。地面に思いきりしりもちをついてしまう。
「いってぇ……」
「いたた……」
どうやら俺は誰かとぶつかってしまったらしい。
「ごめんなさい……! 俺、急いでて……」
俺はぶつかった相手を見て息をのんだ。陽の光のせいか茶色がかった髪を胸のあたりまで垂らしている女の子も俺と同じようにしりもちをついていたからだ。よりによって女の子と激突してしまったらしい。
「ちょっと手、貸して」
俺は言われるがまま手を差し出すと、女の子は俺の手を取り、そのまま立ち上がった。
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